「…………川……」



「……ら……川っ……」



「荒川っ!!」



「はっはいっ!!」



気がつくと目の前のPCの後ろから山口君が顔を出して覗いていた。

慌てて目の前の資料を誤魔化す様に掴む。


「大丈夫かぁ?」


「なっ何がっ?」


「その資料逆さまだけど?」


「えっ?………あ……………はぁ~……ごめん。ちょっと別件で考え事してて。サボってた訳じゃー」


「厄介事か?俺でよければ話聞くぞ?」


「いや、大丈夫!で、何の用だった?」


「あ~それがさ、今度、社員旅行あるって話~。」


「えっ?!社員旅行っ?!そんなの聞いてないっ!!」


「なんかさ、社長の気まぐれらしいんだけど、近場の温泉一泊だってさ。家族も招待していいらしい。」


「何それ~……そんなのしなくていいのに……折角の休みがぁ~。」


「取引先の親しい人も呼ぶらしいから、かなりの人数なるみたいだけど、俺ら営業は強制参加だってよ?」


「はぁ??強制?!それ社員旅行じゃないじゃん!!私達だけ接待じゃん!!」


「それよな~。どうせ独身チームは呼ぶ家族も居ないし、余計虚しいわ。……荒川は蒼君、呼ぶのか?」


「蒼っ?!なっ何でっ?!」


「一緒に住んでるし、家族みたいなもんだから呼んでいいんだぞ?」


「いや、子供じゃないんだし、誘っても来ないでしょ!ハ……ハハッ.....。」


明らかに動揺して、笑う声が上擦ってしまった。


「そうか?それなら仕方ないな。あぁ……アレだな?蒼君が来たら女子社員が群がっていつも大変だし、止めた方がいいな?ハハッ!!」


「確に蒼が参加したら、大変な事になりそう……。」


「えっ?」


「ううん!!何でもない!!アハハハ.......。」