お見合いの日の翌日、私は暫くは蒼の態度がよそよそしくなるだろうと予想していた。

あんな事があったし、きっと未だに啓介の事も疑っているだろう。

結婚する意思が無い事を信じて貰うまで、長期戦だと踏んでいたのだが…………。


「硝子さん!おはよう~!!」


「ん?何?……あお……い?」


「そろそろ起きないと、ご飯食べる時間無くなるよ?」


「え?……うん。」


いつもと変わらず、寧ろいつもよりハイテンションな蒼に少し戸惑いつつも、気まずい朝食にならずに済んでほっとする。


「そうだよね?もうあの頃の様に子供じゃないんだもんね?私も切り替えなきゃ……よし。」


いつものルーティンで手際よく準備をしていく、ドレッサーの前でふとピアスが片方無い事に気がついた。


「あ~……買ったばかりなのに……もう失くした?……蒼~!!ねぇ~!!私のピアス知らない?ダイヤのお気に入りのやつ~!!蒼~?!!」


姿が見えない相手に向かって声を張り上げると、バスルームの方から声が響いた。


「ピアスなら洗面所にあるよ~!……今手が離せないから、急ぎなら取りに来て。」


「やった!!よかったぁ~……また失くしたら最悪だったよ~!」


ピアス失くし常習犯の私は、いつも蒼に見つけて貰っていた。

不思議と蒼は私の失くし物を見つける天才で、いつも私に戻してくれる。


「蒼~!!いつもありがとね~!!」


私は勢いよくドアノブを引っ張って洗面所の扉を開けた。