抱き締めると熱くて、震える肩がまた私の胸を締め付ける。


「そんな事ないっ!!普通って何?!……蒼は私と同じ……むしろ凄く綺麗じゃんっ!!」


体を少し離して顔をよく見る。

ぐしゃぐしゃの泣き顔は、ほんのりピンクに染まって、更に私を心を惹き付ける。


「この髪も……この瞳も……この肌も凄く綺麗。おまけに頭もいい……ふふっ……ね?どれも私より良い物持ってる!」


「……全部嫌いなんだ……消えてしまいたい。皆と同じ黒でいい.....嫌なんだ何もかもが.....。」


「うん……うん。でも、私は好きだよ?」


私の言葉にギュッと瞼に力が入って、また大粒の涙が落ちた。


「……本当は……本当はもっと近づきたいよ……もっと人に期待してみたい………。」


いっぱいになって、壊れそうだった心の中身を減らす様に、少しずつ少しずつ込み上げたモノを、一つずつ一つずつ零していく。


「うん……うん……それから?」


「普通の家庭に育って……両親も……普通にいて欲しかった……。」


「うん……うん。」


「普通に友達も欲しかった……。」


「うん……。」


「もう独りになりたくない.....。僕を……独りにしないで…………。」


私の肩に顔を埋め背中にしがみつく。

ゆっくりと幼子をあやす様に、背中をトントンと叩くと、私の瞳からも涙が零れ落ちた。


死なないで欲しかった……

私の全てだった……

命だった……

葵……


「ねぇ?……きっとあなたは、赤の他人の私が言うなんて不思議だと思うかも知れないけれど、聞いてね?」


肩に頷く振動が伝わる。


「…………消えたりしないで欲しい、あなたは私の命で、全てなの。…………だから、私にあなたを守らせて?絶対、独りになんかさせないから。」


「……本当にあなたは変な人だ……だけど…あなたの傍に居たくなる。」


「フフッ...魔法でもかけちゃったのかな?あーそうだ!ずっと聞きたかったんだけど、これから蒼って呼んでもいいかな?」


「はい……硝子さん。」


この時、初めて蒼は本当の笑顔を見せた。