人が多い所は嫌いだ。
だから、学校も同様で嫌い。
どうしたって自分を好奇の目で見てくる人間が多い。
男とも女ともつかないこの容姿も嫌いだ。
色素の薄い髪の毛も、この青い瞳も全部嫌いだ。
何処かの血が混ざっているのだろうが、それが母親なのか父親なのか、それすらも分からない。
自分は一体何者なのか、生きている意味はあるのか?
たまに全部、真っ黒で塗りつぶしたくなる。
塗りつぶして、そのまま影に溶け込んで終わってしまいたい。
そうすれば、僕を引き取ったあの女人(ひと)も楽になるだろう。
毎日、何かある度に、そんな事ばかりを考えている反面、急に自分が居なくなったら、あの女人は捜してくれるだろうか?
そんな問答を繰り返していた。
「橘君、おはよう!」
「おはよぅ……。」
「いつも同じ時間に来るね?」
「まぁ……そうだね。」
「橘君って、かっこいいね?彼女とか居る?」
「え?彼女?!……いないけど……。」
「へぇ~そうなんだぁ?ふふっ……いい事聞いちゃった!!」
訳の分からない返答に少し戸惑いながらも、僕は違う意味で緊張していた。
今日はあの女人が、学校に来る。
初めての三者面談……あの女人は本当に来てくれるのだろうか……?
朝の会話を思い出す。
期待なんかするなって、ずっと自分に言い聞かせて生きてきた筈なのに、どうしようもなく今日は落ち着かない。
絶対来るって言っていた……。
そこには、確実に期待している自分がいた。