「今日の三者面談、3時半からだよね?」


「はい……来れますか?」


「大丈夫!大丈夫!ビシッと決めて行くから!」


あのお風呂事件から3ヶ月経ち、二人での生活のリズムも少しづつ形になって来ていた。

仕事柄、夜遅く不規則な生活の私の代わりに、料理上手な蒼が半分以上料理を作ってくれる。

どの料理も美味しくて、和食中心のおかずはきっと橘先生の好きな物ばかりだったのだろうと思わせた。

学校の方も蒼の転校手続きも無事済んで、今は毎日学校に通っている。

今日は転校して来たばかりの蒼の為に、担任の先生がわざわざ三者面談の場を設けてくれた。

今日ばかりは仕事もさっさと切り上げて、気合を入れて準備せねば!

仕事以外に、久し振りにやる気が漲っている自分がいた。


「……別に普通でいいですから……それじゃ行ってきます。」


「あ!うん……いってらっしゃい!気をつけてね!!」


恥ずかしそうに少し振り返って小さく頷く、出掛ける時のお馴染みの光景。

いつか笑顔で振り返る姿を見てみたい……、そんな事を最近ふと考えたりしている自分がいる。

少しづつは近づいている筈なのだけれど、ある程度まで近付けても、それ以降は全く変動がない。

“これ以上は近づけない”とでも言う様な感覚が、私達の間には見えない壁となって存在しているみたいで、その所為か、未だに蒼を名前で呼べないでいた。

彼も彼で、私の事を名前で呼ぶ事はなかった。


「初めての面談か…よし!頑張るぞ!!私はあの子の親みたいなもんなんだから!!」


沈みがちな自分に少し気合いを入れて、出勤準備を始めた。