これ以上話したら泣いちゃいそうで、私は携帯を口元から離した。


「そういや、山口君にもちゃんと報告しとけよ?」


「えっ?山口君?なんで?」


「はぁ~...........報われない奴がもう一人居たか...........。」


「何っ?」


「いや、何でもない。」


「何か電話で報告する形になってごめんね?」


「半分以上分かってた事だから、気にすんなよ。会って話してたら、俺キツかったかも知れないしな。」


「啓介...........。」


「じゃあ、またな。あいつとお幸せに。」


「うん。...........啓介ありがとう。」


「俺にお礼なんかするなよ...........じゃあなっ!」


啓介はそのまま通話を切った。

一瞬、寂しそうに呟いた声が耳に残った。


「あなたを一生懸命愛した事は、忘れないよ...........。ありがとぅ...........。」


色んな想いが広がり、また胸を締め付けるけれど、今はちゃんと自分の中でその気持ちを整理出来る様になった。

忘れるんじゃない、その気持ちと一緒に生きるんだ。


「それでいいよね.........葵ちゃん...........。」


涙に釣られ出て来た鼻水を啜りながら、身体が冷えている事に気づいた。


「クシュンッ!!寒っ…。」


「こんな所で何してんの?...........風邪引くよ?」