何も真新しい場所でもなんでもない、焼き鳥の煙が立ち込めて、酔っぱらいが騒いでいる様な、よくある路地裏の飲み屋街なのに、今の俺の目には、何もかもが新鮮に見えた。

一歩踏み出した脚は、走り出す。


「そこのお兄さ~ん!!焼き鳥如何っすかぁ~??」


「すいません!!また今度っ!!」


どんどん加速して、自由になる。

何処でもいい、疲れ切るまで走った。

息が切れて、汗が際限なく身体中を伝う。

不思議と息が苦しくならない、何処まででも行けそうな感じすらしてくる。


「はぁ...........はぁ...........はぁ...........はぁ...........。ここ何処だ?」


公園へと続く階段に、崩れる様にして座り込むと、段差も気にせず寝転んだ。


「......................俺はもう子供じゃない...........欲しいモノは自分で取りに行けるんだ...........なんだ...それだけだったんだ.........。」


見上げた星空の視界の端に、一瞬星が流れた。


「...........お星様...あの人以外、他に何も要りません...お願いします...........。」