もういい。 バイト中は何がなんでも返事なんかしない。 目も合わせてやらない。 シヅキが怒ったって俺には関係ない。 後ろから呑気な鼻歌が聞こえてくる。 「春人」 「なんだ?」 「気持ちいね」 いい気なもんだ。 この陽気の中ただ自転車の後ろに乗って、苦労も我慢もない君はさぞかし気持ちがいいだろう。 「呑気だな」 「だって風が気持ちいいんだもん」 「成仏する方法は考えてるのか?」 「成仏。そっか、成仏かー」 「いつまでもここにいたら地縛霊になるぞ」 「それはやだなー」