「ムリっ!!!!!」


突然聞こえたその言葉に魔王は瞬きを繰り返す。


「は?」


「ムリだってば!!」

「何故だ」


勇者はまっすぐ魔王を見つめていた。

「だって、魔王は優しいんだもん。」


「何を言っている、我は世界に仇をなす存在だ。」


魔王は困ったように眉を寄せる。

せっかくの雰囲気が台無しだ。


「私を強くしてくれてありがとう。
でも、そのおかげで魔王のことを倒すことができなくなったの。
あなたはこの世界にいていい存在だもの。」


「何を…」

言葉が出なかった。

それは、昔、誰かが言ってくれた言葉とよく似ていたから。

《あなたの存在は、この世界で必要なのよ。》

あの人は、誰だったか…