「くっ…さすが魔王。
私を片手で軽々しく捕まえるなんて。」


悔しそうに顔を両手で覆う勇者を見て魔王は吹き出しそうになった。


…勇者は軽すぎる、町の男でもきっと片手で捕まえれるほどだ。


城に着くと、
空いている客室のベットに勇者を放り投げ、
キッチンへ向かった。

もう何百年も使っていないキッチンは
埃っぽくて汚かった。

そして気がつく。

《いつから1人で生きて来たんだろう》


寿命で執事を失くしてからは
ずっと一人だった。


魔王は突然空っぽになった心に
どうしたらいいのかわからなくなってしまった。