黒猫の恋模様

使われていない教室だから空調機が使えるわけもなく、
教室内の窓を全て開け切る。
九月を迎えたとはいえ、まだまだ残暑が残っている。
例え1時間だけとしても、窓を開けねーのはしんどい。



「…凛は、ホントに遊び人だね」

「はぁ?なんだよ、今更」



落ち着いた詩は、音楽室の中をふらふらと歩きながら
そんなことを唐突に切り出した。



「別に、凛がそれでいいならいいけど、
ホントに好きな人がいるなら、その人に誤解されちゃうよ?」



今まで何人も彼女を作ってきたが、
こんな事を詩の口から言われるのは初めてだ。



「へぇ、恋愛経験のねー詩が俺に説教ねー」

「説教じゃないってば!!
ただ、凛に辛い思いしてほしくないだけで…」



ちょっとからかえばすぐ膨れる可愛い彼女に
微笑みを向けながら



「じゃあ、詩は俺がいい加減でサイテーな奴だって思う?」



そう問いかければ、ブンブンと大きく頭を振った。



「私は一回もそんな風に思った事ない。
だって凛、ちゃんと彼女のこと大事にしてきたもん。
彼女が凛の顔しか見てなかったって事も、
たくさん元カノがいても二股かけた事ないことも知ってる。」



ベートーヴェンの肖像画の前で、
そう必死に俺に伝えようとする詩の目は
痛いぐらいに真っ直ぐ俺を捉えていた。