明日は卒業式。


だから、もうあたしたちの関係は


ずっとこのままなんだと思う。



自分から告白なんて考えられないし。


今の定位置で満足してしまっている自分がいるのも事実。


高校は離れてしまうから…


きっと、あたしたちは会わなくなってお互いの人生を歩んでいくんだと思う。


高校じゃあ、出会いもたくさんありそうだし。



「なに?」



どうせ、いつものように「昨日のクイズ番組見た?」とかどうでもいいようなことなんだろうな。


まあ、こうして話せるのもあと一日だと思うと名残惜しいから、どうでもいいような話でも大切にしたいと思う。




「バレンタインのお返し買うから今日の放課後空けとけよ」



はあ……?


あたしは望夢の口からするりと出た言葉に自分の耳を疑った。


バレンタインのお返し?



「は?あげてないんだけど。」




あたしは迷いに迷ったけど、中学に上がってから三年間一度もバレンタインのチョコレートを彼にあげなかった。



あたしがあげなくても、お調子者だけど人気者で普通に顔のいい望夢は他の女子から山盛りのチョコレートをもらっていたから。



それはもう大きなポリ袋がパンパンなるほど。
毎年、「サンタさんみたいだね」ってからかっていたのを昨日のように覚えている。



それに、「俺、甘いの嫌い」とか言ってたし。
山盛りのチョコレートは毎年お兄さんの胃袋に入るのだとか。



本人に食べてもらえないのを
分かってて渡すほどあたしは図太くない。