「休んでいるかい?」

「ええ、文字のかながきに夢中でございます」

「それはよいぞ。たて、なりに」
「どこへゆくのですか」


「外へ出てしごとへ」

「どうぞおきなく」



晴海こう裕子は、安らかな瞳である。
誕生のものをひみつとして、不思議と人気ものである。

「おしごとはおきになく。」
人への執着心が強い晴海にとって、その娘と息子が、そうではなく正義としてラクに生きられることを望んでいた。


子育ては初めてである。
その娘同様、母ですと名乗らせ、
父を責めることもあった。