零度の華 Ⅰ



よく、キレイ事を言えたもんだな



『守り抜けていないのなら意味がない。それに、説得力もない』



下唇を噛む鮫島は悔しそうだ

あたしはそれを横目に愛川にナイフを向けている男に言う



『愛川を殺す覚悟でそのナイフを首もとに当ててるんだろ?殺してみろよ』



ほら早くと急かすと焦りを見せる光華に加え、視線を向けている男


愛川も怯えて涙を流す



『お前も、あたしを殺してみなよ。愛川もあたしもその覚悟はある。なぁ、愛川?』



罵声を浴び続けるが気にも止めず、話を続ける

愛川は喋ることもできないほど涙を流す


後ろの男もナイフを持って震えているのが伝わっている


コイツ正気なのかと言いたげだ

自分が死ぬかもしれないこの場面で殺してみろという奴なんていない、そう思うのが当たり前か


握っているナイフは、ただの脅しとして使っているだけだからな



結局、その程度の覚悟でしかない

口だけで、いざとなった時には逃げ怯える