零度の華 Ⅰ



すぐさま、今まで締めていたネクタイを緩める


外を見渡すと、異様な雰囲気に包まれる




「そろそろ聞いてもよろしいですか?」


後ろからこちらを見る烏(クロウ)


あたしは歩みを進めながら『あぁ』と返事をした




「まず、どうやって偽造したのですか?」


『あぁ。これのことか』




そう言ってFBIの手帳を出した

中の写真は間違いなく変装したあたしの姿がある



『俺、友達多いからな。こういうのに詳しいプロがいるんだよ。そいつに頼んだ』



アメリカ合衆国の首都であるワシントンに住む、ある男に作らせた

喜んで作ってくれて、すぐに日本に送ってくれたよ



運び屋を使ってな





内ポケットにそれをしまい、欠伸をこぼす



「そうなんですね。次にトイレで色々と作業してましたけど、何をしていたのですか?」


『おい、見ていたから分かるだろ』


「指紋の採取。そんなもの何に......もしかして、先程取られた指紋はトイレで採取したものですか。しかし、騙せるのですか?」


『手紙には同じものがつけているが、鷹見ならすぐ見破るだろ。あの場だけ騙せたら十分だ』