零度の華 Ⅰ



『今日、貴方にお会いしたかったのは、これを渡したかったからです』



あたしはジッパー袋に入れた手紙をそのまま鷹見に渡した



「手紙ですか?誰からですか?」


『零(ゼロ)からです』




一瞬にして鷹見の顔が変わる

眉間に皺を寄せては怒りを露わにしている




「拝見してよろしいですか?」


『もちろんです。そのために持ってきたのですから』




鷹見は指紋がつかぬよう手袋をはめ、手紙を読み始めた


読み進める鷹見は何か焦り始め、時計に目を向ける




長針が11、短針も11を指している




「おい!!誰でもいい、すぐにテレビの電源を入れろ!今すぐだ!!」




怒鳴る鷹見に急かされるようにテレビの電源を入れるも、ただの特番をやっているMCの声が流れるのみ




「あ、あの.....鷹見警部?」



部下に呼ばれていることに気付かないほど、気持ちに余裕がないのだろう



時計とテレビとを交互に見ては何かを待っている様子に、部下もこれ以上誰も声をかけられない