零度の華 Ⅰ




「ボスに刀を向けるのか?早くそれをしまえ」


その瞬間、雲雀は硬直する

まるでメデゥーサに見つめられたかのように

あたしによって気圧されている


あたしは真顔でただただ雲雀を見る



「ボスに逆らう気か?」



この部屋はあたしの殺気のせいでピリピリとしている

その中で、ましてやあたしの殺気を間近で受ける中で声を出せるのはそれだけ実力があるということ


でも、その声は弱いと思われぬように強がっているだけ




『あたしは自由にさせてもらう』


「聞こえなかったのか?これ以上、勝手に動くな」


『無理な話だな。何でもはいはいと頷けるほど出来た人間じゃないから。それに……』


あたしは続けてものを言う



『それほどにお前があたしを拒む理由は何か知りたいしな。鯱(オーカ)には任せることが出来るのに、あたしには出来ないその理由を』


もう既にその理由を知っているが、まだ知らないふりをしていた方が面白い


でもどうだろうな

雲雀もそこまで馬鹿ではない

もう勘付かれていることに気付いているのかもしれない





あたしは短刀を鞘におさめ、笑って親指で雲雀の唇をなぞる