中に入ると何もない部屋だった。本当に住んでいるのか疑問だ。生活感が全くない。
俺の後ろから入ってきた川本がソファーに座るように促す。

「紅茶でいいですか?」

「ああ。」

そう言うと、彼女はお湯を沸かし始めた。
そして、お湯を沸かしている間にカーテンを全部閉めた。

「カーテン閉める必要あるか?」

「誰にいつ見られてるかわからないじゃないですか。それにこれから話すことは事件のことについてなんで。」
そういうことか。と1人で納得していた。

お湯が沸いたのか紅茶をソファーの前の机の上に置いた。

「どうぞ。」

「ありがとう。」
入れてもらったからにはお礼を言わないと失礼だろうと思った。

「それで、本題ですが被害者のお宅を訪ねる前に高橋さん私に聞きましたよね?どっちだと思うか。」

「ああ。」
確かに聞いた。課長がすごく絶賛しているから、もう既に結論が彼女の中で出ているものだと思っていた。

「断定はしませんがどちらだと思うかの質問なら答えられます。」

「で、川本はどっちだと思ってるんだ。」

「他殺だと思います。あの母親の言葉を信じるなら。」

「あー、あの服のブランドの話か。だけどブランドがなんだって言うんだ?事件には関係ないと思うんだが。」
そうだ、服のブランドで自殺か他殺かを決めるのはおかしいと思う。
確かに、年齢層に合わない高いブランドの服をきていたかもしれない。だが、だからなんだと言うのだ。

「男の人から見れば服のブランドでどうこう言うのはおかしいと思われるのかもしれませんね。」
また、ヒヤッとした。まさか、また読んだんじゃないかと。そんなことを思っていると彼女も気づいたのか、笑いながら読まなくてもわかりますよ、と言った。

「まぁ、取り敢えず私の意見を聞いてください。別に服のブランドがどうこう言っているわけはなく、自殺だったら少し不自然ということなんです。それに、服のブランドが関わっているだけで、服の話をしているわけでわありません。」
そんなことは、俺もわかってる。だけど、理解できないんだ。

「取り敢えず川本の意見を聞く。」