「あなたは高校を卒業後間もなく結婚した。大学に進学したかったが、あなたの両親はそれを許してはくれなかった。結婚した夫は浮気性でほとんど家に帰ってくることはなかった。それは娘の春香さんが産まれても変わらなかった。春香さんは大学に進学し、大手企業に就職も決まっていた。それは、あなたにとって嬉しいことであり、同時に憎らしいことでもあった。だって、その道はあなたが歩みたかったものだから。」

母親は、目を見張った。

どうして、そんなことがわかるんだ?
なんなんだこいつ。

「...あなた、なんなんですか?もし、それが本当だったとして私が犯人だって言うんですか?なんなの本当に。」

「いえ、あなたが犯人じゃないことはさっきの質問で証明されました。」

どういうことだ?

「犯人であれば。あんな質問しないですから。それと、聞きたいんですけど、春香さんは仲のいいお金持ちの友達はいましたか?」

...っは?仲のいい金持ちの友達?いや、そこは誰に恨まれるようなことはなかったですか?だろ。

「すみません。あの子、自分のことあんまり話すことなくて。家族の仲もよくはなかったですし、私に話すことは取り敢えずなかったです。ね」

悲しいな。俺にも家族はいるがみんな和気あいあいと暮らしている。今は、兄弟みんな実家を出て一人暮らしだが、定期的に実家に行ってみんなで顔を合わせる。

「そうですか。わかりました。ありがとうございます。質問はこれで終わりです。また、何かわかりましたら、こちらに連絡をいただけると幸いです。」
そう言うと、彼女はバックの中から名刺入れをとり、1枚の名刺を母親の前に出した。

いや、もっと聞くことあるだろうと、思い口を開こうとすれば、川本に腕をつかまれた。

「それは、聞かなくていいです。」
まるで、俺が今から何を聞くのかわかったような口調だった。

結局この日は、そのままそのお宅を後にした。

車の中で俺は疑問に思っていたことを彼女にぶつけた。

「おい、どうしてあんな捜査情報を漏らすようなことをしたり、核心的なことを聞かないんだ。誰かに恨まれるようなことはないか聞いてあれば、そのおかげで捜査もすごく前進するだろ。」

しかし、イライラしている俺とは打って変わって冷静な彼女。