離脱した俺と黛さんは、少女のそばへと移動する。

「ななみちゃん、小山田君の肩を!」

「うん…!」

無表情な白いワンピースの少女…ななみが、俺の砕かれた肩を治癒する。

…彼女も超能力者…覚醒者か。

「1号は強すぎるわ」

黛さんが頬に汗を伝わらせながら言った。

「私達の戦力では勝てない。ここは一旦退きましょう」

「……」

俺はその言葉を呑む訳にはいかなかった。

「忘れたのか、黛さん」

ななみに治癒させてもらった肩を動かして回復の度合いを確認しながら、俺はゆっくりと立ち上がる。

「奴から逃げるという事は、延々と追われるという事だ…そしてその逃避行の過程で、多くの人間が巻き込まれる」

一ヶ月前の御影市での逃避行を思い出す。

任務達成の為ならば民間人だろうと無関係の人間だろうとお構いなしに巻き込む1号。

俺はそんなやり方が許せずに、1号に…機関に叛旗を翻す事を誓った。

ならば退く事は許されない。

これは俺のプライドだ。