私には…恐らく黛さんにも、その人物がどうやって降下を成功させたのかがわかっていた。

ヘリから飛び降り、地面に叩きつけられる寸前…その人物は目に見えない力を使って自らの体を浮遊させたのだ。

念動力…テレキネシスとも呼ばれる超能力。

その力によって落下速度を相殺し、激突する事なく降下を成功させた。

そして、そんな離れ業をやってのける事ができる者は、私が知っている限り唯一人。

「最悪だわ…」

私の手を握る黛さんの掌に汗が滲んだ。

…降下を成功させたその人物は、ゆっくりと体を起こし、私達の方を見る。

黒のアサルトスーツにタクティカルベスト。

長い黒髪によって、顔の左半分は隠れている。

そしてもう片方…右の目は。

「2ゴウ…ギギギ…ターゲット…ギギギ…ウふアハハハハハハハハハハハハっ!!!!!」

完全に正気を失った目だった。








覚醒者1号。

機関が実用化に成功した初の超能力者。

一ヶ月前の覚醒者3号の回収任務の際に死亡したと聞かされていたけど…。






「生きていたのね、1号」

黛さんは歯噛みした。