状況が呑み込めていない私をソファーに座らせた彼は、ちょっと待っててと一言残し、キッチンへ向かった。


なんだ。この状況…
昨日はテニスの新歓に行って、そこで汐莉と話して、飲んで…
新入生と話してくるか―と意気込んで、新入生と話して…それから……


「思い出せない…」


今までお酒を飲んでつぶれて、記憶をなくしたっていう経験はない。

お酒に強いか弱いかで言われたら、私は恐らく前者である。

今まで、テニスの合宿でアルコール度数40を超えるお酒を飲んだ時も、記憶を飛ばしたことはない。むしろ、私はいつもお酒でつぶれた人の介抱役をしていたのだが…


ガチャッ


部屋のドアが開いて、彼が二つのマグカップを持ってキッチンから戻ってきた。


「はい、陽向さん。とりあえず、これ飲んで温まって下さい。飲んだら、話します」

「あ、ありがとう…」