そして、その夜、誘われて。
「もうこれはいくしかないと思って。俺単純だから……まああの後男メンバーの方から散々ばかにされたんだけど。有果相手に本気になるなよって」
「はは、なにそれ」
「俺は知らなかったけど、あの界隈では有果けっこう有名だったみたいだよ。かわいいけどすごい遊んでるって」
……そりゃそうか、あの頃は貞操観念すっからかんで合コン三昧だったから。
悪名高くもなるよな。当たり前。
……ああ、でも、そうだ。
「でも今でもこうして有果を独り占めできてるんだから、俺の勝ち」
胸の奥をじりりと焦がされるようなこの感覚を知っている。
彼に触れられる度に。彼に名前を呼ばれる度に。いつまでだってここにいたくなる。どこへも行きたくなくなってしまう。
わたしを抱きしめながら、こんなに幸せそうに笑う彼から、
離れるなんて、最初からできっこなかったんだ。
こういう話初めてするよな、なんて照れくさそうに目尻を下げる彼を見ると、なんだかまた涙が出そうになって。悔しいから今度はわたしから唇を押しつけてやった。
悪戯に啄むように。慈しんで食むように。
そばにいたい。共にありたい。
きみが受け取ってくれるなら、わたしのこれからを全部ぜんぶ、きみにあげたい。