合コンで彼氏を作ろうなんて思ったことはない。男女混ざって楽しく喋ったり歌ったり食べたりする時間そのものが好きで、あわよくばその中で夜も一緒に遊んでくれる人がいたらいいなー、くらいの気持ち。


だからまあ、要は誰でもいいのだ。

彼に話しかけてみたのはほんの気まぐれ。そのときたまたまそういう気分になったから。


カラオケで盛り上がる部屋の片隅でひとり黙々とスマホをいじり続けているその姿が、なぜか妙に、気になってしまったから。




「なーに見てるの?」


ドリンク片手に隣へ移動してきたわたしに、彼はぎょっとしたようにスマホから顔を上げた。
少し目が合って。すぐに逸らされて。「別に何も……」と小さく答えた彼の手元を覗くと、画面にはやりかけのパズルゲームが映し出されていた。


「あ、それ知ってる。最近よくCMでやってるやつだ」

「……うん」

「面白い? 似たようなの前にやったことあるけど難しくてやめちゃったんだよね」

「……これはそんなに難しくないと、思う」


名前は確か、タナベくんだったか。

黒髪短髪に、メタルフレームっぽい眼鏡。塩顔。いかにもこういう場には不慣れな感じで、今日のこの男メンツの中に引っ張って来られたとは思えないくらい明らかにひとりだけ雰囲気が違う。