帰宅して玄関に入るが、濡れたままじゃ中に入れない。



しばらく待ってみたけれど、蒼が来る気配もない。




「蒼ー!!」



聞こえているかわからないが、名前を呼んでみる。





…ガタン







物音が聞こえて、リビングから蒼が顔を出した。




「…ッは?」





驚く蒼に苦笑いで誤魔化してみる。




「雨、すごい降ってる」


「……傘は?」


「持っていかなかった」


「…。ちょっと待ってて」






一度リビングへ消えていった蒼だが、すぐにバスタオルを持って戻ってきた。




全身びしょ濡れの私を上から下まで眺めた蒼が、呆れたようにため息をつく。


「風邪引きたいの?」


「…ごめん」




「それじゃ部屋入れないよ」





バスタオルを頭から被せられ、体を拭かれる。



「でもね、買い物袋は濡れてないよ!」




必死に守って持って帰ってきた買い物袋を指さすと、蒼はそれを見てわかりやすく苦笑した。



「あれは守って 自分びしょ濡れでどうすんだ」


「…そうだけど」








「今日は傘を持ってくだろ、普通」


後悔しているところを指摘され、何も言えない。






「…あ、あと洗濯物」


「…干しっぱなんだな」


「ほんとにごめん…私が洗い直す…」






タオルで全身の水気を拭き取ると、最後に髪を拭いてくれた。



擦らず丁寧に水気を取ってくれるその行為に、蒼の優しさがにじみ出る。






「おっけー」



「ありがと…」






そのまま靴を脱いで上がろうとしたら、肩を押さえて止められた。



「ちょっと待て…、そのまま上がったら床が濡れる」


「…あ、そっか」





「靴下脱いで……てか、服脱げ」



「っえ!?ここで?」



「どうせ全部びしょびしょだろ」



「……そうだけど」



「服脱いだら上がってよし」







そう言って買い物袋を抱えると、私を残してリビングに行ってしまった。



「え…」