翌朝、まだ眠っている蒼の首元と額に手を触れてみる。
「…あれ?」
昨日のような熱さは引いたようだ。
「よかった…」
薬が効いたみたいだ。
「…はよ」
「ッあ、ごめん、起こした?」
「…ん。平気」
ゆっくり体を起こした蒼に、体温計を渡す。
「頭いたい?」
「大分楽だよ」
答えてくれる蒼の顔色は、昨日と比べると大分良くなった。
……ピピピピッ
『37.4』
その表示を見て、蒼が「微熱」と呟く。
「昨日はお粥作ってくれてありがとうな」
「…覚えてる?」
「食べたのは覚えてる」
まだ少し熱い手で、髪が撫でられる。
「高島先生は?」
「いたのはわかる。あまり記憶はない」
「…そっか」
あの様子じゃそれもそうかもしれない。
「朝ごはん作ってくるね。…なにかリクエストある?」
「あったかいお粥」
「…んふ、わかった」
昨日は蒼が『食べない』と拒んでいたせいで、お粥も冷め切っていたのだろう。
また食べたいと言われることは、素直に嬉しい。
「作ってくるね」
寝室を出ようとしたら、呼び止められた。
「季蛍。ありがとう」
弱った蒼も、たまには見たいかもしれない。
*おわり*