目的の駅まであと3駅。
そんなところでつり革を掴む愛香の腕が降りた。
さすがにキツくなったか、そう思って視線をやる。
……ん?
電車の揺れで、崩れるような愛香の体を咄嗟に支えた。
「愛香」
耳元で名前を呼ぶ。
反応はあるが、様子がおかしい。
「愛香」
「…ごめん」
「次、降りよ」
「ん、いい」
「よくないだろ?」
「…あと少しでしょ?」
「我慢は良くない」
「…ごめん」
次の駅で降り、愛香の体を支えながら椅子に座らせる。
「口開けて」
「薬やだ…ッ」
「そんな事言ってる場合か」
「…。」
スーツのポケットに入っていた錠剤を、愛香の口の中に入れる。
「水」
嫌そうに顔をしかめたが、水を流し込み飲み込んだのを確認した。