その時はすぐに来た。
足音が聞こえて、毛布を引っ張った。
言い訳の理由は考えたが、きっと通らないだろう。
足音が消え、扉がゆっくりと開かれた。
音をたてないようになのか、それはそれはゆっくりと。
廊下の明かりで照らされた足元を見て、驚いた。
…看護師じゃない。
その服の色は見覚えがある。
白衣ではない、その服の色に。
毛布を握る手に力が入った。
ゆっくりと開いた扉の隙間から、誰かが顔を覗かせる。
「…港?」
思わず声が出てしまった。
「陽。なんで起きてる?」
中に入って来た港は、やっぱり手術着だった。
港は枕元の電気をつけると、側に椅子を寄せて腰を下ろした。
「きつい?」
「…ッえ?」
「顔」
「…顔?」
訳が分からず呆然としていれば、港の右手が首元に触れる。
「顔見ればわかるよ」
正直、港に隠し通せることはないと思う。
「ちょっときつい…かも」