昼ご飯は陽が好きなお店。
それなのに陽は飲み物だけで、ずっと窓の外を見てる。
「昨日は何してたの?」
仕事がこれだと毎日連絡することもなく、陽には寂しい思いをさせていると思う。
知りたくても聞けない。
話したくても話せない。
そんなことは多い。
「仕事のあと家で寝てた」
「陽も仕事?」
「早退したんだけどね」
"えへへ"
軽く笑う陽がすぐに目を外に向ける。
「…早退って?」
「別に大したことじゃないの」
「昨日は?いつ寝た?」
「……。忘れちゃった」
「…ご飯は?」
「んー、忘れた」
「忘れるわけない」
「忘れたって…。港ってすぐそういう事聞く」
嫌そうな顔。
不満そうな表情。
確かに大切なデートの日は、こんなことは言いたくない。
それでも頻繁に会えないからこそ
陽のことを知りたい。聞きたい。知っておきたい。
職業柄気になって仕方がない。
大好きな陽だから。
「陽が隠そうとするからでしょ…?」
頭に手を置いて、優しく声を掛ける。
「せっかく楽しいデートなのに…」
見上げる陽の顔は赤い。
若干涙目になっているのは気のせいか…?
「隠し事はしないって約束でしょ?」
「……。」
「そんな黙るなよ、怒ってるわけじゃない」
頭に置いた手を離し、頬に触れる。
「目が泳いだから。気になっただけ」
「…、食べてない」
「…少しも?」
「朝ちょっと食べただけ、あんまり食欲ないの」
「体調でも悪いのか?」
「悪くないって」