「おはよう」くらい打ってやれば可愛げもあるのにーー。


バシャバシャと激しく水音を立てて洗面を済ませた。
朝食はトーストを焼いて、スライスハムとレタスを挟んで食べた。
自分で淹れたコーヒーは苦いばかりでちっとも美味しくない。雨宮さんが淹れるように甘い香りも立ってない。


情けないな…と痛感する。
何処まで行っても自分はデキない……。


諦めて早く食べ終え出勤の準備を始めた。
オフィスへ行って彼に出会ったら何と言って声をかけよう。

「昨夜は楽しかった？」なんて聞いたらイヤミ以外の何ものでもないよね……。


白のブラウスの上からライトグレーのジャケットを羽織り、いつもならパンツにするけど今日はスカートにしてみようとネイビーのプリーツスカートを選んだ。

裾が透けて見えるデザインで、アラサーぎりの自分が必死で若作りをしてるように感じる。


だけど、自分だって女子なんだから彼と出会った時にドキッとして貰いたい。
可愛くないしデキないことだらけだけど、女として認められたいーー。



「何を思ってんのよ…」


情けないような気分に陥り、吐息混じりに玄関へと向かう。
黒のパンプスを履き、シューズボックスの前で全身を鏡に写して見た。



「今日はデキる女じゃないな」


明らかにいつもの自分とは違う雰囲気。
こんな私を目にして彼がどう思うだろう。