おはようからおやすみまで蕩けさせて

「ふぅ…」


パソコン画面から目を離して息を吐く。
もう少しで発注の入力が終わる。これが済んだら今日はやっと帰れる。

乾いた目を誰もいなくなったデスクの島に向けた。
そういえば天宮さんも、こんなふうに遅くまでブースに残ってたんだ。

私達が定時で帰る姿を笑顔で見送り、「また明日」と声をかけてくれたっけ……。


(あの頃…どんな気分だったんだろう…)


見送られる側は呑気で良かった。大変だな…とは思っても、手伝うことまではしなかった。

天宮さんは私よりも仕事の捌ける人だったから、下手に手伝って足を引っ張ってもいけないと思ってたんだ。



(忙しかったのに飲みにも誘ってくれたよね…)


いつも私のことをよく見てた。
仕事が上手くいってもいかなくても、何かあったら「飲みに行こう」と誘ってくれた。


(…でも、そんなふうに誘われてたのって、きっと私だけじゃなかったんだ…)


今夜は楽しく合コンの席で飲んでるだろう。
営業部の女子達は嬉しそうに出て行ったもん。



「天宮さんと合コンなんて萌える〜!」


私の耳に聞こえる様にわざと大きな声で話してた。
山本さんは「いいんだな?」と念押しをしたけど、敢えて何も言わず黙り込んでた。


部内の会話から別居の噂は確実に広まってるんだと思った。