おはようからおやすみまで蕩けさせて

山本からどんなふうに聞いたかは知らないが、俺は好きで参加する訳じゃない。


後ろ髪を引かれるような思いで人事部へと戻った。
課長と部長の三人で話をした後は、新人社員の研修を任された。

結実のことを気にしつつ、ようやく研修が終わったのは終業時間間際。
急ぎ足で営業のブースへと向かう途中でーー



「おーい!浬!」


こういう場面で一番会いたくない奴が営業部から出てきやがった。


「天宮さーん♪」


女子までが一緒か。


「グッドタイミングだな。じゃあ店へ行こうぜ」


ガシッと肩に手を乗せられて捕まる。
「ちょっと待てよ」と部内に視線を投げれば、山本の目が半分くらい細くなった。


「嫁さんなら心配するな。さっきトドメのように『いいんだな?』と聞いたら無言だったぞ」


それは怒っての無言だったんじゃないのか!?


「奥さんなら大丈夫ですよー。今日も残業みたいだし」


(…何だ。リーダーだけに仕事任せて自分達は合コンなのかよ!)


行きましょう…と手を伸ばす女子から一歩離れた。
結実以外の女に触れてなんて欲しくない。


「悪いけど一人で歩けるから」


営業部の中を気にしながら合コンのメンバー達とビルの外へ向かう。
ノロノロと歩く俺は群れから一人離れた。



「浬ー!置いてくぞー!」


山本の声に小さく舌を打って足を運んだ。

「知らないから!」と走って逃げた結実を思いながら、重い足取りのまま付いて行った。