おはようからおやすみまで蕩けさせて

取り敢えず頭数を揃える為だけに参加するんだ、と結実に教えておきたいのに、こういう時に限って邪魔が入る。



「天宮君、ちょっと…」


上司にあたる人事課長に呼び止められてしまった。


「何でしょうか」


マズい時に見つかった。歩みを止める俺に近寄り、課長はニコニコしながら話しだした。


「来年度の新規採用者に向けたセミナーのことなんだがね…」


それは今でなくてもいいことじゃないのか。
こっちは今すぐにでも結実に会っておかないとマズいのに。

そう思いながら、今朝の結実の様子が頭の中を巡る。
「好きにすれば」と言い放った彼女は、俺と話したくない気分かもしれない。


「部長の榊原さんにも意見を聞いておきたいから一緒に話し合いに出てくれよ」


課長は自分よりも年下の部長を苦手としてる。
少しアクの強い人ではあるけど、悪い性格じゃないのだが。


「構いませんよ」


こっちは役職を降ろして貰ってヒラなのに重役同士の話し合いに参加するのか。いくら来年度は課長職を引き継ぐとは言っても、今から仕事を振ってくるなよ。


イラッときたけど仕方ない。
こういう事もあるのは分かって異動したんだ。


「それじゃ行こうか」


課長の背中を追って行った。

結実に言い訳するのは後にしよう。
とにかく合コンには行ってもさっさと帰ると話せばいいんだ。