おはようからおやすみまで蕩けさせて

「愛妻なら家に帰れよ。嫁さんの顔色なんて窺わないで自分がやりたい様にすればいいだろう。それをしないなら参加しろ。悪妻の目が届かないんだから何をしても許されるし」


「だからって合コンには出ない!」


分からず屋の山本に突っ掛かった。
奴はタバコの煙を燻らし、俺の方へ向き直った。


「俺は単純に頭数を揃えたいから出てくれと頼んでるだけだ。さっさと帰っても文句は言わねーから飲みに行こうぜ」


もう予約も入れてあるんだと言いだす。こういう事についてはやたらと根回しの早い男だった。


「部屋に置いてやるんだからいいだろ。それくらい協力してくれても」


そうだ。こいつは相当な腹黒だ。
こんな奴を結実の側に置いたのは間違いだったか。


「本当にそれでいいんだな。行っても女達とは話もしないぞ」


三十分で帰ると言えば、それでもいいから居てくれと言いだす。


「俺が上手いこと言って帰らせてやるよ」


本当はお前がいると女子を独占するから困るんだと笑い、「それなら別の奴を誘え」と言えば、「面倒だからお前でいい」と投げやりな態度だ。


「それに何だか面白くなってきたしな」


「何がだ」


「浬と悪妻が」


「悪妻じゃない!結実は愛妻だっ!」


もう一度怒鳴ってから喫煙コーナーを後にした。