おはようからおやすみまで蕩けさせて

ムカムカと胸の中が苛立ってくる。
天宮さんは私じゃなくて、自分とだけ対話してる。


「結実」


「好きにすればいいでしょ!天宮さんなんて知らないからっ!」


言い捨てて逃げた。

もうやってられんない。

何でこうなるの。

こんな筈じゃなかったのに。



バンッ!!と開けて屋上へ出れば、空は晴れ渡って空気は何処までも澄んでる……


「もう、バカ!!天宮さんのバカ!!」


バカー!と大声で叫んだ。
こんな結婚今直ぐにでもやめる!

あんな人だとは思わなかった。
もっと私のこと見てるのかと思ってたのに。


視界が揺らめいて泣いてることに気づく。

悲しいんじゃなくて悔しいから泣いてる。


(だって、そんな人だと思っても好きだもん。だから、プロポーズはあんなだったけど入籍もしたんだから…)


天宮さんの妻になって彼のことを大事にしたくて。
おはようからおやすみまで彼に蕩けるような幸せを感じて欲しくて。

なのに、私の疲れが取れるまで山本さん家に住む!?

ずっと疲れたままだったらどうするの!?

私がいいよと言うまで帰って来ないつもり!?


沸々とお腹の中が煮え返ってくる。
抑えることが出来なくて、もう一度大きな声で「バカー!」と叫んだ。


はぁー…と大きな息を吐いて涙を拭った。営業部に戻ったら天宮さんの姿はなくて。