オフィスへ行くと、まず最初に人事部を覗いた。
室内には天宮さんの姿はなくて、そりゃそうだ…と思う。

あの人は今、役職も外されてヒラなんだ。
急いでやる仕事もないから定時出勤をしてたんだった。


「いいご身分よね」


やさぐれた気持ちが蘇ってくる。
本来なら自分がやりたかったことを彼がしてるのが気に入らないだけ。


「私もあの人みたいにのんびり出勤したいもんだわ」


以前の自分みたいに、気紛れで早く出勤する日があるくらいで丁度いい。
今は早めに出勤してもなかなか仕事が終わらないくらいに忙しくて、益々仕事がデキないことを実感する。

要領が悪くて一向に片付かない。だから、毎日のように残業続き。


(そりゃ疲れもするよね。帰ってもベタつかれて、すんなりとは眠らせても貰えないんだから)


「はぁ…」


重い溜息を廊下に落として営業部のブースへ向かう。
このまま廊下に倒れたりしたら今日は仕事を休めるのに。


(学校行きたくない子供みたいなこと考えてる)


呆れるくらい幼稚な考え。
でも、天宮さんの作った照り焼きを食べたおかげで残念なぐらいに元気いっぱい。


(食べなきゃ良かった…)


全てが恨み言になる時点でもうお終いなのかな。
何もかも負担に思うようになったら、私はいずれ彼も嫌いになってしまうのだろうか。