あんなイケメンで仕事のデキる彼を旦那さんにして、誰からも羨まれたり恨めしく思われたりするのに。


自分の望みとはかけ離れていくからイヤなの?

それで、こんな空虚な気持ちになるの?

だったら自分の望み通りになれば満足?

そしたら気持ちも満たされる?



答えが見つからずに重い息を吐き出した。
雨が本降りになり始めて、ようやく重い腰を上げた。


カツン、カツン…と階段をゆっくり降りて部署へ向かう。
戻ったら先ず、津田ちゃんにさっきのことを謝っておかないとーー。


そう思うのに何故かそれすらもしたくなくなる。
心が重くて、どうしようもない……。




「天宮リーダー!」


営業部のあるフロアの廊下へ辿り着いたら、私の姿を見つけた津田ちゃんが走ってきた。


「大丈夫ですか?顔色良くないですよ」


あんな事態を任せて逃げたのに心配される。
こんなデキの悪い上司なのに、津田ちゃんだけは結婚前と態度が変わらない。



「津田ちゃん…」


ごめんね…と言いたいのに言葉が出ない。
その代わり、涙の粒がボロッと溢れた。


「先輩……」


自分よりも背の低い彼女の背中を抱いた。
今は誰でもいいから肩を貸して欲しい。


「…っ…ひっ…く…」


どうしてこんなに悲しいのか分からない。
甘える相手が違うのは十分分かってるんだけど。