加えてさっきの二人の様子は何?

あんなふうに私以外の人に触れるような彼ではなかった筈なのに。



(結婚すると男の人って変わるの?)


空の雲に向かって疑問を投げ掛けてみても、答えが戻ってくる訳じゃない。
ネズミ色の雲は速い速度で動き、直ぐにでも雨を降らそうか…としてるだけ。


何だかもうイヤだ。
何もかも、全部イヤになる。

結婚も仕事もオフしたい。
私一人になって、もう一度最初からやり直したい。


あの厄明けの誕生日の朝に時間を戻して、もう一度あの夜をやり直したい。

泥酔した状態で弾みのように言った言葉を取り消したい。

天宮さんにリーダーになって貰って、私は別の部署に異動したい。


何もかもゼロに戻して。

何だかもう、心がパンクしてしまいそう……




目を閉じると、ポツン…と水が落ちた。
見上げたままの姿勢でいたから、雨粒が頬に当たったんだ。


視線を下げればコンクリの上に幾つもの黒いシミができてる。

それが一つ、また一つと増えていくーー。



(あーなんか、こんな感じ…)


あの夜からこっち、私の心にはこんなシミが一つずつ増えていってる様な気がする。

天宮さんが私を甘やかせば甘やかす程、そのシミがどんどん数を増してる。

溺愛されてこんな気持ちになるなんて私だけ?