「結実(ゆみ)からそんな発言が聞けるとは久し振りだな。大丈夫。いつも通りにやればいいよ」


茶色の眼差しを細くして笑う。
彼が私のことを「結実」と呼び捨てにするのは二人きりの時だけだ。



「そうですけどね」


緩くカーブする口元を眺めて答えると、その言葉に微笑んだ人が、「あ、そうだ」と声を漏らした。


「商談が上手くいったら飲みに行こう。駅の近くに美味しい料理を出す店ができたらしいから」


他の女子達から聞いたと思われる台詞を言って誘う。
私なんかよりも、社内には幾らでもいい女がいると思うんだけど。


「本当ですか。だったら頑張ろうかな」


今夜は金曜日でもあるし、誕生日に一人というのも虚しいから乗っておこうか。


「その代わり上手くいかなかったらナシだぞ」


あーあ、その一言が余計なんだよね。


「精々頑張りまーす!」


声を高めに上げて笑った。

大厄の晴れた朝、早速嬉しいことが舞い込んできた。