ソファに寝転び、仰向けの状態で息を吐いた。
ベランダに続く窓の外は快晴で、気持ちよさそうに風が吹いてる。

この風みたいに自由にウロつけたらいいのに。
家事もしないでいるから、まるで病人みたいな気分になっちゃう。

妊娠は病気じゃないんだけど浬さんは溺愛の上に心配性で、安定期になるまでは何もしなくていいから…と言い張るし。


(…もうっ、私は何の為に妻やってんの!?)


ハァー…と深い溜息が出て行った。
マタニティーブルーなんて早過ぎるよ。


お腹の上に手を置いたままでウトウトとしてくる。
やたらと眠くなるのもお腹の中に命が宿ってるせい?


そのままクゥ…と眠り付いた。
インターホーンが鳴り響いてるのに気づき目覚めると、お昼近くになってる。


「ヤバっ!またこんなとこでうたた寝したっ!」


ガバッと起き上がって反省。

風邪でも引いたら浬さんが怖い。
怒るから怖いんじゃなくて、極度に心配されるから困るんだ。


『ピンポン、ピンポン』


さっきから鳴り響いてる音を思い出して玄関に急ぐ。
ドアの内側から「はい」と言いつつチェーンをしたまま隙間を開けるとーー。



「良かった。居たのね」


「お義母さん!」


浬さんの母親が訪ねて来るなんて久し振り。
驚いてドアを閉めた瞬間、ささっと身だしなみを整えてからチェーンキーを外した。