家に帰ってまでしなくてもいいと言うのに聞かないんだもん。
こんな調子で子供が生まれたら、家事も育児も完璧にこなしてしまうんだろうか。


「困ったパパだこと」


呆れながら頬にキスを落として横になった。
妊娠してから急に体温が高くなったせいか、なかなか熟睡できない毎日が続いてる。

うつらうつらしてるうちに朝を迎え、朝方涼しくなって眠り込んだら、次は燦々と陽射しが降り注いでる。
慌てて起きれば、既に隣に眠ってた彼はいなくてーー



「あちゃー、また先越された」


急いで着替えて洗顔し、リビングへ続くドアを開けようとしたんだけど。



「もしもし、俺。今いい?」


どうやら電話をかけてるような気配。
こんな早い時間に誰に?


ドアを開けるのも躊躇われ、そのまま外で待った。
浬さんの声は途切れがちに聞こえて、話の内容も相手すらも掴めてこない。

そのうち、ドアの外側に私がいるのを知ったらしく、「じゃあ宜しく」と言って電話を切った。

入ってもいいのかな…と窺いつつ開けてみれば、キッチンの流しには彼が柔かな笑みを浮かべて立ってる。



「おはよう、結実」


「おはよう…」


さっきまでしていた電話の説明もなく、お味噌汁用のジャガイモを千切りしてる。


「ねぇ」


「ん?」