『そこの奥さん、貴女のご主人様は大丈夫ですか!?』


女性レポーターの真に迫るような声を聞き、ギクッとしながら画面に見入る。


『こんなことがあったら要注意です』と話す内容を目で追いかけ、この最近の浬さんの様子を思い出した。



1.やたらとオシャレに気を使うようになった。


(それっていつもだし…)


2.出張や仕事だと言って出掛ける。しかも、泊りがけ。


(うーん、無いような…)


3.思いがけないプレゼントがあったり、やたらに優しい。


(ええ〜っ。それって毎度だとわからないよ〜)



やっぱりどうにも無さげだ。
あの人に限って浮気なんて。


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「行ってくる」


「行ってらっしゃい」


玄関の狭い三和土に下りずに手を振ろうとすれば、ドアレバーに腕を伸ばそうとした彼の動きが止まる。
振り返ったままじっと顔を見るから「何?」と笑いかけたら……


「結実」


ぎゅっとハグされた。
学校行きたくない子供みたいな行動を取られて面食らう。


「浬さん、遅れる」


「大丈夫。もう少しだけ」


ビジネスバッグから手を離し、顎の下に指を滑り込ませる。上向きにされた唇に彼の温かい唇が重なっていく。


「ん……んっ…」


お出掛け前のキスならさっきも交わした。
でも、今のこれはそれとは違う。