「おめでとうございます!お体大事にして下さい!」


いいな、いいな…とお腹を眺めて目を細める。
そんな彼女の口から「あ…でも」と冷めた声が漏れた。


「気を付けて下さいよ、天宮さん」


こそっと内緒話でもするかのように顔を寄せてくるもんだから、思わずこっちも彼女に近寄る。


「何が?」


窺うように尋ねると、右手を口の側に立て、「う・わ・き・です」と囁く。


「浮気?誰が?」


瞬きをしながら聞き返し、まさかあの人のこと疑ってる訳じゃないよね…と思う。


「呑気過ぎですよ」


呆れる津田ちゃん。
こっちは呑気だと言われてもピンと来ず、ますます意味不明に首を傾げた。


「天宮さん、知らないんですか?夫の浮気は十中八九、妻の妊娠中に発生するんです」


「えっ!」


「だってエッチの回数も減るし、ボディタッチも少なくなるでしょう?だから、旦那様が欲求不満になるらしくって」


天宮さんのご主人だって例外じゃないです、と言い切る彼女の言葉に唖然とする。


あの溺愛体質の浬さんが浮気!?
そりゃ無きにしも非ず…というか、可能性ゼロとは言い難いけど……。


「津田ちゃん、ごめん。悪いけどそれは考え難いよ」


彼を信じてるのもあるけど、やっぱりどうも不似合いな感じがする。


「自分に自信があってそう思う訳じゃなくて、陰でコソコソ浮気してる彼が想像出来ない」