「結実、そんなことはしなくていいから座って」


洗濯物を干そうかとカゴを持ち歩いてただけなのに止められた。


「でも…」


「いいから」


無理やりソファに連れて行かれ、着席とばかりに肩を上から押しつける。
どうすりゃいいのさ…という感じで彼を見上げれば、嬉しそうに洗濯物の入ったカゴを手にベランダへ向かう。

鼻歌交じりに洗濯物を干す夫。
妊娠が判明した途端、主夫に戻ってしまった浬さん。


「あのー、私は何をしてればいいのー?」


呆れ口調で尋ねれば、「テレビでも観てなよ」だって。
出勤前の夫に洗濯物を干させて、呑気にテレビを観る心境でもないが。


(でも、観ないと機嫌損ねるし)


言い出したら聞かない人の言葉通り、プツッ…とテレビの電源を入れる。丁度朝のワイドショー番組が始まったらしく、今日の特集を見て驚いた。



『夫が浮気してるかも!?兆候は何!?教えて〜!!』


朝から凄まじいタイトルリングだな…と眺め、ドキン…と嫌な予感が走る。

それは先週末の出来事が頭の中に甦ったからだ。


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妊娠報告する為に久し振りに津田ちゃんと会った金曜日。
平日のランチタイム。オフィスに近い洋食屋さんでのことだ。



「妊娠9週目に入ったの」


そう教えたら、彼女は飛び上がらんばかりに喜んでくれた。