自分がもっと若ければ、いろんな方法が試せるかもしれないけど、私はもうアラフォーで、出産をするにもタイムリミットが近付いてる。


「……子供を宿して生むことが、こんなに不安なことばかりだと思わなかった……」


甦ってきた恐怖に身を強張らせ、ゾクゾクとしてくる体を抱く。


浬さんは私の話を真剣に聞いてた。
私達はお互いに、同じ不安を抱えてたんだ。



「ーーー結実には悪いと思うけど……」


暫く考え込んでた口を開き、私はそんな彼を見遣った。
眉根を寄せている表情は固くて、それを眺めたまま、ごくっと唾を飲んだ。


「俺は…結実が居ればいいと思ってる。子供は授かるに越したことはないけど、居ても居なくてもいいと思う」


申し訳なさそうに囁く彼と目が合う。
「結実は?」と聞かれて、涙がボロボロと溢れ出した。


「私も同じ。浬さんが居てくれればいいの……」


その言葉を聞きたくて仕方なかった。
例えその場凌ぎになっても、きちんと自分を認めて欲しかったんだ。



「…結実」


伸ばされた腕の中に潜り込んだ。
この腕の中に抱き締められるのは、私だけでもいいから。



「抱いて。浬」


どんなにお酒の臭いがしてもいい。
どんなダメな貴方も私の大事な一部にしたい。


「此処じゃ駄目だろう。先ずは風呂に入ってから…」