抱いてる腕に力を込めて、一層強く抱き締められる。
ワイシャツからはタバコとお酒の臭いがして、それから多分、焼き鳥のような匂いも染み付いてる。



「……何かあったの?」


今朝のいきなりな愛撫と言い、今のこの体たらくと言いヘンだ。
デキる男で通してきた浬さんとは思えない行動ばかりを起こしてる。



「ん…別に…」


そう言いつつも離さない。
顔を上げて見ると、ぼんやりと空を眺めてる。


「浬…?」


様子を窺いながら声をかけると、宙を彷徨ってた目線が下がり、私の目線と交錯した。

何だか知らないけど顔付きがおかしい。
自信無さそうに見えるのは、自分がそんな気持ちだからだろうか。



「……結実は…子供が欲しい?」


いきなり開いた唇から飛び出した言葉にギョッとする。


何!?
私の顔に何か書いてあった!?


「ど、どうしたの?いきなり…」


心臓がバクバク鳴ってる。

ヤダ、もう。
どうしてそんなこと聞くの?


「いきなりじゃないよ。この間からずっと考えてたんだ。もしも俺が不妊症だったらどうするだろうって。子供も出来ない男と一緒に居ても平気かなって…」


酔ってる割には真面目そうだ。
真剣に問うてるのは、その顔を見ればわかる。


彼が自信の無さそうに見えたのはそれでなの?
不妊症って何故?どういうこと?