「私、今が一番浬さんの近くにいる気がする」


同じベッドの上で繋がってる時よりも心が近い。


「それ少しショックだな」


彼は私よりも深い想いで居てくれるんだろう。
悲しそうな顔を見せる。


「だって、そう思うんだもん」


一緒に暮らしだしてスゴく溺愛されても、何処か気持ちが冷めていくみたいだった。
彼のことを負担みたいに思って、大事な何かを見失ってるように感じた。


「そう言えば温泉行くか?津田さんに本を貸して貰ってるんだろう?」


「津田ちゃんが言ったの?」


デスクの引き出しに直し込んだガイドブックを思い浮かべた。


「うん。『たっぷり癒やしてやって下さい』と頼まれた。今度の週末にでも行ってみるか?連休で人出が増える前に」


「いいの?」


「だって新婚旅行も式も…指輪もまだだし」


そう考えると俺達、夫婦よりも恋人みたいだな…と言い出す彼にハッとする。


入籍ばかりを急いだから、全部が後回しになってるんだ。



「それじゃ…恋人からやり直さない?」


「えっ…」


ギョッとする顔に微笑んだ。


「だって、指輪もないから恋人みたいでしょ?今からスタートし直すの」


「籍は?」


「それ抜けたらバツイチじゃない!」


ヤダもうっ…と肩を押せば、真面目になって安堵する。