「俺、今日しみじみ反省したんだ。結実のこと思ってるようで、全く思い遣ってなかったんだな…って」


「…えっ?」


「酷い男だったよな。意見も聞かずに異動なんかして」


情けなさそうに肩を落とす人を見つめ、「そんなことないよ」と言ってあげたかったけど……



「そうね。ホントに酷い話だと思ったよ。最初はね」


トレイにご飯とおかずを乗せて手渡した。


「天宮さんだけが楽な思いしちゃって、と思った。私の夢も聞かないで、完璧な主夫をやるんだもん。
おかげでこっちは仕事でも家事でも劣等感ばかりを感じて落ち込んでしまったし、デキないけど頑張らないといけないから、ムリして疲れてたし…」


今日は今日で、自分で何とかしようとして怖い目には合うし、ホントにいろんな意味で、毎日がとても忙しかった。


「本当にごめん。俺はただ結実を甘えさせたくて…」


「私は甘えるよりも甘やかされてばかりだったよ。何もしない妻になんて、居なくてもいい気がした」


恨み言を話せば、残念そうに肩を落とす。
そんなところも初めて見る気がして、何だか少しだけ小気味いい。


「天宮さ…じゃない、浬さん、あのね、私……専業主婦になってもいい?」


彼の顔を下から覗いて見ると、伏せてた目がぱちっと開いた。


「私の夢ってホントはそれなの。暗い玄関先を明るく灯して、家族の帰りを待ちたい」