おはようからおやすみまで蕩けさせて

名前を呼ぶ人の声が愛しい。
いつも二人だけの時に呼ぶのと、同じ声のトーンだ。



「…天宮さん…」



苗字を呼んだけどそうじゃない。


この人は私の大事な旦那様だ。
この世で一番、私を溺愛してくれる人……。




「…浬……」


名前を呼んだらぎゅっと抱き締められた。
ボロボロと涙が零れて苦しくなってきても、暫く離して貰えなかったーーーー。



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「カトー研究所」を出る時、山瀬さんは見送りにも出て来ず、代わりに部下だと思われる人が「すみません」と頭を下げた。



「とんだゲス野郎だな」


待たせておいたタクシーに乗り込む山本さんが罵る。
その言葉に、私も天宮さんも答えなかった。



元を正せば私のミスが原因だ。
こんな足が透けるスカートで、出社したことも間違いだった。



「今日はこのまま退社しろよ」


隣に座る彼がそう言って振り向く。困惑する気持ちで見返すと、「頼むからその格好でオフィスに居ないでくれ」と願った。



「天宮さん…」


弱ったように眉根を寄せる彼が囁く。


「俺が嫌なんだ」


理由を言って覗かせる表情が可愛く見えると言ったら顰蹙だろうけど、こんなふうに甘えられたのは初めてで……



「……じゃあ……そうする」


今夜はマンションに戻って来て欲しい。
いつもとは反対に、私が貴方を迎えたいーー。