自分の浅はかな行動に泣きそうだ。
ブルブルと震えだす私に山瀬さんが嬉しそうに笑った。


「折角だから少しくらい楽しみませんか?旦那さんだけじゃ満足できないんでしょう?」


ヤダもう…それ以上近寄って来ないで……



「かい…り…」


唇の隙間から漏れた声に、山瀬さんの顔が綻ぶ。


「旦那さんの名前?残念だけどいないよ」


感じたことのない恐怖にビクつき、それと同時に腕が伸びてきた。



「……やっ!」


後ろへ下がろうとしたけど、突き進んでくる山瀬さんの方が速い。
ぐっと掴まれた手首に力を込められ、ゾクッとする様な寒気が走った。


「やっ…やま…(せさん…止めて…!)」


声が出せないほど凍り付く。
腕を振りほどこうとしてもビクともしない。


「商談中は『仕事人』でも、こういう時は女子なんだね」


それも魅力的ですよ、と褒められる。
あんたなんかに褒められても、ちっとも嬉しくなんかないっ!



(お願い!誰か来て!)


握られたまま腕を自分の方へと引き寄せると、どんどん山瀬さんが近づく……


「ほら、僕を求めてる」


(違うっ!怖いんだってば!)


とうとう下瞼の上に涙が溜まりだした。
どうすればいいか分からなくなって、ぎゅっと目を瞑った。



「…お願い!誰か来てっ!!」